はじめに（Page Top）

心理学を学んだ後、小児科医と精神科医として発達障害の方々を診てきました。その中で、現在の診断基準や、社会が考える「発達障害」というものが、当事者の感覚から大きくずれているのではないかと疑問を持つ様になりました。

さらには、臨床現場でよくよく観察をしてみれば、本来は発達障害（新たには「神経発達症」または「神経発達障害」と呼ばれるもの）なのに、統合失調症や遷延したうつ病や不安障害などとして長年通院をしている患者さんが多いことに気が付きました。その後、慎重に診断をしていくと、より多くの発達障害（神経発達症／神経発達障害）の方々に出会うようになりました。そして、その多くの方が、発達障害の診断、治療を行う事で、それ以前の状態よりも生活の質が向上しています。外来で出会う方々を、より正確に診断することで、より良い結果が生まれていると感じています。

しかしながら、もともと「敷居の高い」精神科の外来で、受診してくる患者さんを待っているだけでいいのだろうか、という自問も生まれました。

来院された患者さんを診察するのは普通のことです。しかし、今までなら病院（特に精神科）には来なかった人々の中に、本来ならば医療のサポートがあればより良い日常生活が過ごせる人が確実に多数いると推測する中で、このままではいけないのではないかと考える様になりました。

このサイトに書いてある事は、あくまで一精神科医、一小児科医としての私見です。しかし、私は一医師の枠を少し超えて、世の中に自分の考えを問いたいと考えこのサイトを作る事にしました。

発達障害（神経発達症／神経発達障害）の人々は、世間で肩身の狭い思いをしていることが多いと思います（小児の場合親御さんも）。しかし、それは必要以上に不当だと思うのです。本当は才能豊かで優しくて、思いやりの気持ちを持った人々が多いと思っています。偏見や差別は、発達障害の人々の「マイナス」の面ばかりに目を向け過ぎるからだと思います。全人格が発達障害の人はいません。純粋な心、優れた才能や能力、多くの人に好かれる性格などの「プラス」の面に目を向ければ、もっと違った目で発達障害を見直せると思うのです。

変な日本語になりますが、人は多かれ少なかれ「発達障害なところ」を持っているのではないのか、発達障害を考えれば考えるほど、そう思ってしまうのです。私は、人は皆「ユニーク」なのだと思っています（「ユニーク＝ヒューマニティ症候群」の着想の原点もそこにあります）。そして、人の「ユニークさ、人間らしさ」と「発達障害」は密接に関わっているのだと思っています。だからこそ発達障害は決して他人事ではなく、すべての人々の中にあるものなのだと思っています。このサイトでは、人の持つ「ユニークさ、人間らしさ」と「発達障害」との関連を、様々な角度から考えてみたいと思っています。そして「障害」という見方が、少なくとも今の現状から変わっていくことを、心の中で期待しています。

発達障害について、多くの人々が「自分にもそういう要素があるかもしれない」と少しでも思えれば、決して他人事ではないと感じられるはずです。皆が少しずつでも思いやりの心を出し合い、そのことで、社会の中で生き辛さを感じている人々が、自分の持っている良い特性をもっと自信を持って語れる世の中になれば、今の社会がより優しく、より良い方向に少しでも前進すると思っています。そういった願いを込めてこのサイトを作ってみました。

いつかです。遠くない未来に、

「 私、ちょっとユニークな所があって、パソコンは超得意なんだけど、約束とか、とっても気をつけていても忘れちゃう時があるから、何か気がついたら遠慮なく指摘してね 」

なんて会話が、ごく普通の会話になれば、より多くの人々にとって今より生きやすい社会になるかもしれません。

【Blogについて】

このサイトのBlogは一般的なブログとは少し異なります。通常は、ある日に感じた事などを綴るのがブログであると思います。このサイトのBlogは、サイトの内容に関連した出来事等を通して、発達障害への理解や、発達障害と人と社会が密接に関連していることへの理解を深めたい気持ち、さらには発達障害や発達的特徴を通して初めて、より明確に見えてくるかもしれない人や社会の持つ側面や姿を探求していきたい気持ち、そういった様々な想いを込めてある方向性を持って書き続けています。今現在、その途中です。まだ道半ばですが、そのような理解のもと、今後のBlogについても続けてお読み頂ければ幸いに思います。

（2014.11.20 公開　2018.8.29 一部更新）