発達障害を
ユニーク=
ヒューマニティ症候群と
呼んでみませんか?
突飛な提唱ですが、最後までお読みいただければ幸いです。
大人の発達障害について「4つの治療視点」を示したいと思います。
現実には、大人の精神科外来において発達障害の診断すら広まらない中、治療に関してはなおさら広まっていません。診断も難解に思われがちですが、治療はより難解な事柄にも思われがちです。
一般的な話をすれば、発達障害の治療に関しては、ADHDには大人では2つ、小児では3つの処方薬があります。より多数と思われるASDに関しては、直接の治療薬はありません。
ASDに関してはその症状、状態の一つである「易刺激性、易興奮性」に対してはアリピプラゾール、リスペリドンという薬物が適応薬として認められていますが、厳密には小児だけに限られます。大人の発達障害には、使おうと思っても、正式に認められている処方は、ADHDに関してのアトモキセチン(商品名ストラテラ)と徐放型メチルフェニデート(商品名コンサータ)しかないのです。
これらだけで、全ての大人の発達障害の治療をカバーできるのでしょうか?それに対してはNoと言わざるを得ません。しかし、治療視点を明確にすれば、介入できる視点はあると思っています。具体的には、
① 衝動性の視点(ASDとADHDの両方に認め得る症状)
② 過敏性の視点(主にASDの要素として)
③ トラウマ、PTSDの視点(ASDとADHDの両方で頻度が高い)
④ 集中力の視点(ADHDの要素として)
です。
① 衝動性について
ADHDと診断できればアトモキセチンで効果が見られる場合があります。ASDであってもADHDの要素がある場合、また少ない場合でもアトモキセチンで衝動に効果がある場合は見られます。アトモキセチンが前頭葉に特異的に作用することから、抑制がより効く状態になる故と思われます。他には抗精神病薬(メジャートランキライザー)の少量使用、気分安定薬など、精神科で従来より使われている、鎮静系、気分安定系の処方で効果がある場合は多いと思われます。抑肝散などの鎮静系の漢方薬も有効と思われます。
② 過敏性について
ベンゾジアゼピン系抗不安薬が過敏性を軽減する場合は多いと思われます。依存性の問題が近年指摘されているため安易な使用は控えるべきですが、効果は無視できないと思っています。他にはバルプロ酸やリチウムなどの気分安定系の薬剤、いくつかの漢方薬、など治療手段は複数あると思います。
③ トラウマ、PTSDについて
従来から行われているSSRIなどの抗うつ薬による治療、眼球運動を利用したEMDRなどの治療、心理療法としての暴露療法などがあると思います。さらには、脳画像検査技術の進歩から体の痛みと心の痛みを脳の近い部位で感じていることも分かり、そのため中枢性の鎮痛薬がPTSD治療に有効である可能性も指摘されています。つまり中枢性に効くタイプの痛み止めの薬剤はトラウマ治療に有効とも考えられ、芍薬成分を含む漢方薬が発達障害の治療に広く使われ、効果をあらわしているのはこのためかとも推測します。関連した学説としては海外では「オピオイド仮説」も提唱されています。今後の知見が増えることを期待します。
④ 集中力について
ADHDの治療薬であるアトモキセチン、徐放型メチルフェニデートが効果を示す場合は多いと思います。発達障害の中では大人への適応も認められて数年経過し、治療としても認知されてきています。
発達障害の治療の理想は「環境調節と理解」と言われる場合が多いと思います。しかし現在の社会ではその理想の実現がなかなか難しいのが現状であり、さらには、核家族化なども含め社会生活環境が大きく変化してきた現代では、有効な薬剤を適切な量(多くは極少量〜少量で効果がみられると思われます)を用い、そのままでは困難な日常を支援をしていくことが大切ではないかと思っています。
(2015.6.18 公開 2018.9.7 更新)
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