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突飛な提唱ですが、最後までお読みいただければ幸いです。

Blog【「傷は消毒しない」が常識に 】

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傷口はきれいな水で十分洗浄する。

そして消毒液は傷口には使わない。

これは今では創傷治療の常識になってます。


傷口を消毒するということが必要だと思っている方は、これを読んだら自分の中の常識をアップデートしてください。いわゆる「赤チン」は製造過程で水銀が出るためから販売が急激に縮小しました(まだ売っているのは赤チンの長年の愛用者がいるのが理由のようです。現実には傷口に塗って良い事は少ないと考えられます。確かに刺激の少ない消毒液ではありますが)。いわゆるヨーチンも消毒用アルコールも傷口に塗るのはやめた方がいいでしょう。痛いだけでなく、傷の治りが悪くなり、傷跡も残りやすくなります。


「え? 消毒しなくて大丈夫なの?」

きれいな水で十分な洗浄をすれば大丈夫です。大丈夫であるだけでなく、消毒するとむしろ傷が「化膿」しやすくなります。


アルコールを傷口に塗ると痛いと思います。つまり、傷口の細胞を刺激して、ばい菌だけでなく正常な人の細胞も壊します。それはばい菌にとってはとってもおいしい「ごちそう」です。ばい菌がすべて無くなる事は通常はあり得ないので、残ったばい菌がごちそうを頂き、そして傷が化膿するのです。


少なくとも、自分が医師になってから、傷口を消毒液で消毒したことはほとんどありません。今の医療現場では生理食塩水や蒸留水で洗浄するだけです。一般家庭であれば、水道水で十分です。ばい菌がつきやすい砂やゴミや木片などの「異物」を洗い流すのが一番の目的です。


さらに傷の治療は大きく変化しています。傷口が、砂やゴミなどとの接触がなくて、ばい菌が少ないと考えられる状態ならば、十分な洗浄をしたあと、

「傷を乾かさない治療」

が一番治りが早いのです。これは「湿潤療法」もしくは「閉鎖療法」と呼ばれています。特に子どものやけどの治療では大きな進歩があり、ワセリンなどの保湿保護剤の使用や、ポリエチレンラップや湿潤環境を保つ皮膚被覆材で傷を覆う事で、化膿せず、やけどの跡もほとんど残らず治る事が多くなっています。これは大きな医療の進歩だと思います。


昔のやけどの治療は、毎日毎日、傷に張り付いたガーゼをはがし、痛みにこらえながら消毒し、そしてまた塗り薬を含んだカーゼで覆う。治るまで毎日苦行の連続でした。


今では子どものやけどでも、痛いのはやけどをした時だけで、後は痛みもなく経過してきれいに治る事が多くなっています。なので、お子さんを持っている家庭では、子どもがやけどをしたら、患部を冷やしながら医療機関を受診することをお勧めします。


詳しくは、皮膚科や形成外科での治療で、湿潤療法、閉鎖療法、熱傷治療などをお調べいただければと思います。


「傷は消毒しない」とか「傷は乾燥させるより湿潤環境の方が早くきれいに治る」という新しい常識は大分世の中に浸透してきている医学常識なのですが、それでもなかなか浸透しきっていません。人の考えが変わっていくのには時間がかかるのだと思います。


ただし、傷口がばい菌などで汚染されている場合では注意が必要です。具体的には、

深い傷(釘やとげなどが刺さった傷)、何かで汚れがひどい傷、動物に咬まれた傷、屋外での傷など

これらの傷は医療機関を受診するようにしてください。受診前に出来る事は、水で傷口を十分に洗浄することです。出来るだけばい菌とばい菌がくっつきやすい砂やゴミを落とす事は大切です。


湿潤療法や閉鎖療法はとても良い治療方法だと思いますが、やはり「過ぎたるは、なお及ばざるが如し」です。傷をきれいに治したい一心で過剰にならないように注意してください。また、湿潤療法を正しく理解していない場合などで、逆にばい菌が増え過ぎて化膿したり、重篤な場合では敗血症になった事例も聞きます(糖尿病がある場合では特に注意が必要です)。


「良い治療法」であっても、その仕組みの理解が不十分のまま、ただ「良いから」と一方的に信じすぎる事は良い結果にはつながらないと思います。これは何事でも同じだと思います。適切な状況判断をするためにも、常に自分で考えて検証する習慣をつけるべきだと思います。誰かに何かを任せきりにしたりせず、自分の知識や判断力などを常に涵養することは大切なことだと思っています。



(2015.1.11 公開 2015.5.29 更新)

子どもの頃から、

「傷をきれいに消毒してもなんで化膿するんだろう」

といつも疑問を持っていました。


子どもなりに傷の治療をいろいろ工夫しても、大抵の場合で化膿してしまいました。親に聞いても「お前は化膿しやすい体質だから」と言われるくらいで、やはり納得出来る答えはなく、心の片隅でいつも疑問を持っていました。


それが現在の創傷治療を知ってから、様々な疑問が氷解しました。


実際、この治療を知ってから自分の外傷で大きく化膿した事は一度もありません。ちょとした吹き出物が少し炎症を起こす程度で、傷口が化膿して抗生剤が必要になったこともありません。自分の子ども達も同じです。


傷はとにかく水でしっかり洗浄する。そして、湿潤療法が出来れば傷はきれいに早く治ります。このことは創傷治療の大きなパラダイムシフトだと思っています。

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