発達障害を
ユニーク=
ヒューマニティ症候群と
呼んでみませんか?
突飛な提唱ですが、最後までお読みいただければ幸いです。
母乳のみ:30〜40%
ミルクと母乳の混合:40〜50%
ミルクのみ:10〜20%
厚生労働省のデータや様々な調査をみると、上記の割合が現実のようです。(生後一ヶ月だと母乳の割合がやや高い傾向があったり、多少の変動もありますが)
いつの頃からでしょうか、
「完全母乳=いちばん良い子育て」
という風潮が出来上がったのは。
1990年代にWHOの推奨があった頃からだと思います。
①「できるだけ、赤ちゃんに母乳をあげられるように援助しましょう」
②「医学的に必要でない限り、母乳以外の糖水、人工ミルクを与えないようにしましょう」
などの宣言があります。この推奨の頃から、母乳への指向がより強まったのだと思います。
しかし、私はもっと丁寧な説明をするべきだと思います。
「赤ちゃんにとって低血糖や低栄養は重大な生命の危機につながります(特に脳神経への影響、赤ちゃんの脳は低血糖に非常に弱い)。低血糖や低栄養のリスクがあるならば、体力の予備能力の極めて少ない新生児では、適切に糖水や人工ミルクも用いながら、完全母乳にこだわり過ぎずに「栄養状態の維持」が優先されるべきでしょう。ビタミンKの不足の可能性についても十分に周知すべきでしょう」
「母乳が飲める状態は望ましいことであり、母子関係の形成にも非常に大切です。人為的に母乳を与えないことや人為的に母子を分離することは望ましいことではなく、すべての母子が一緒にいられる状況が望ましく、栄養として母乳で栄養が満たされればそれは望ましいことです。しかし、ビタミンKの問題も含め、母乳が絶対ではないことは確認すべきでしょう」
※ 母乳により母子感染(垂直感染)するウイルスがあります。その場合、母乳を一旦凍結するかミルクでの哺育がすすめられます。現在の日本の医療(産婦人科)では、お母さんが垂直感染するウイルスを持っているかは検査をすすめられます。そういう意味では産婦人科での医療を受ける意義はあるため、助産院だけで出産を考えていたとしても、感染症のチェックはすべきと考えます。ちなみに助産院で生む場合でも、産婦人科でのエコー検査も受けるべきです。産婦人科でのエコー検査を受けなかったために、出生した直後に赤ちゃんに生命危機がありそのまま新生児搬送という事態は起こっています。多くは事前の検査で予測できる経過です(本来法律的に助産院に対する義務のはずなのですが)。お母さんのこだわり(産院や病院でなく助産院で生みたい気持ち)から子どもの生命に危機が生じることがあります。その点は、親は責任をもって子どものことを考えて出産場所の選択をして欲しいと思います。出産に関し「自然」を強調しすぎるところでは代替医療に傾倒している場合があり、そういった所には注意を払うべきだと思っています。
話が少し横道にもそれましたが、何事も、良い点と悪い点の両面をきちんと示すべきと思います。
完全母乳推進の中、その陰で引け目を感じたり、辛い思いをしているお母さんが、実は多く存在している様に思います。しかし冒頭のデータで示したように、実際には半数以上の子どもがミルクを飲んでいます。ミルクは悪ではありません。母乳=善、ミルク=悪、の様に二元論的に議論すべきではないと思います。双方の良い点を用いつつ、一番大切な事は「子どもの健やかな成長」である、そういう柔軟性を持つ必要があると思います。
完全母乳が指向されるなか、実は子どもがお腹をすかせていることもあると思います。常に低栄養傾向の子どもは身体も心も満たされていないかもしれません。ビタミンKの不足の可能性など、母乳では補いきれない事もあります。
そういった観点からも、いくつか述べてみたいと思います。
母乳の良い点
① 赤ちゃんを守る免疫成分が多く含まれる(特に初期の母乳において)
② 母親との愛情、愛着形成で母子ともにとても良い行為である(「適切で安全な」カンガルーケアも)
③ 異種蛋白を摂取することが少ない栄養方法である(ただし母乳は同種蛋白ではありますが、免疫医学的には本来は異物です。経口摂取したときに異種蛋白より分解しやすいのは事実ですが、すべてにおいて「良い」のではありません。たとえ滅菌しても母乳を「点滴」することはありません。免疫学的に考えれば危険であり誰もしません。母子間では免疫学的寛容がありますが、母子間の臓器移植でも未だ免疫完全フリーではありません)
等
母乳だけだと不足するもの
① 初期に母乳が少ないと低血糖や低栄養も生じ得る
(ミルクを足すことも考えるべきと考えます。低血糖は脳の神経発達に大きな負担を与えます)
② 母乳のみだとビタミンK(ビタミンDも)が不足する可能性がある
(多くの産院や病院では生後一ヶ月間に三回ビタミンKのシロップが投与されます。完全母乳の場合では、生後一ヶ月以降でもビタミンKを補充する必要性も指摘されています)
③ 栄養不足を見逃してしまう可能性がある
等
改めて言いますが、母乳だけでは完全ではありません。母乳にはビタミンKが十分含まれていないことが多く、赤ちゃんの腸内ではビタミンKを作る細菌もまだ育っていません。ビタミンKが不足すると新生児の頭蓋内出血が生じ得ます。母体の状態によってはビタミンDが不足する可能性も指摘されています。それらの点からも、母乳が不足気味であれば、ミルクを使うことは栄養の充足とビタミン補充の2つの観点からも有用と思われます。母乳の出る量には個人差もあります。母乳のみの哺育がすべて(栄養面も状況も含め)に優れた栄養法とは言い切れないとも考えられます。
母乳のメリットは沢山ありますが、こだわり過ぎずに柔軟に考えることは、子育てでも大切だと思います。
また、社会的な問題としては、かつてビタミンKの投与に関連して、山口市で損害賠償訴訟も起こっています。社会で一番弱い立場の子どもの安全が守られ、子どもの人権が十分に尊重される社会であって欲しいと思います。子どもを守るのは社会と大人の責任です。社会と大人が、常に成長していかなければならないのだと思います。
育児の目標は完全母乳によるお母さんの達成感ではないと思います。子どもが心身共に健やかに育つ事だと思います。そして親も共に育つことだと思います。
さらに思う事として、全体の風潮として「卒乳」が早いように思います。虫歯の問題は別に書いた通りで、卒乳が遅いからではありません。むしろ、愛着の観点からは、欲しいだけ飲ませてあげるのがいいと感じます。3才まで母乳を欲しがる子どもは、欲しいから飲んでいるんだと思います。小学生になっても、実は母乳を飲んでいる子もいます。満たすべき心がそこにあるならば、満たしてあげた方がいいように思います。
私は、完全母乳ができるなら、ビタミン補充を忘れなければそれでいいと思います。しかし、現実には、ミルクを併用することは悪い事ではないと思います。ミルクだとお母さんが体調が悪い時に休息もとれます。また、お父さんがミルクを子どもにあげる行為は、父性を育てると思います。
自分自身、事情や時代もあり、ほぼミルク育ちです。
一応、健康です。
また「愛着」に関しては2歳までがとても重要と分かって来ています。これは「三つ子の魂百まで」と経験的に分かっていたことでもあります。母乳保育は愛着の観点からは非常に良いと思います。
この点は、愛着の問題として、別に述べたいと思います。
行き過ぎた完全母乳には危険も指摘されています。実際、カンガルーケア中の事故なども起こっています。何事も「良い」という一点だけでの「盲信」は危険です。
常に物事の理由を考え、肝心なことを忘れずに柔軟に対応することが大切と思います。
ちなみに、生誕直後の低血糖と発達障害の関連についての議論も一部されているようですが、明確な関連性に付いては今後の知見を待ちたいと思います。何れにしても、生誕後に極度の低栄養状態にさらされる事は、赤ちゃんにとって良くない事であることは間違いないでしょう。
(2015.2.26 公開 2015.3.3 更新)
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